『脳科学は人格を変えられるか?』2014/7/25
エレーヌ フォックス (著), Elaine Fox (原著) (その他), 森内 薫 (翻訳)
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心理学者で神経科学者のフォックスさんが、心理学、分子遺伝学、神経科学の各分野を横断しながら、人格形成の神秘を解き明かしていく本です。
人生の成否を分けるのは、「前向きであることのできる」性格によるものなのか。だとすると、それは脳のどんな働きによるものなのか……この本の中でフォックスさんは、「サニーブレイン(楽観脳)」と「レイニーブレイン(悲観脳)」は生まれつきのものなのか、環境などで変わるのかについて、実験や調査を通して明らかにしていきます。
深刻な出来事に遭遇したあとでも、もともと楽観の度合いが高い人はそうでない人に比べ、健康度も幸福度も高かったということが、さまざまな実験で明らかになっています。
でも人間にとっては、危険を察知することもまた、生き延びる上で重要な要素です。恐怖の中枢はすべての情報を平等には扱わず、危険にかかわる情報を優先的に処理するのだそうです。ただし、この警報機能があまりに頻繁に活性化されていると、レイニーブレイン(悲観脳)全体が過敏になったりバランスを崩したりすることもあるようです。
フォックスさんの研究では、前向きな感情を起こさせる物質・セロトニンを脳内で運搬する特定の遺伝子を発見。このことにより、楽観的・悲観的な性格は遺伝子によって決まっているのかと一時は想定されたのですが、研究を進めると、これらの遺伝子は、実は環境によって働きが変わってくるという結果が得られたのです。
また、ロンドンのタクシー運転手の脳をfMRIでスキャンした研究では、卓越した位置把握能力を持っている彼らの海馬が成長していることが明らかになりました。プロの音楽家の脳も、複雑な音の聞き分けや精密な動きをするのに関わる脳の複数の領域が大きくなっていることが、fMRIのスキャンで同じように確かめられています。成熟した大人の脳でも、訓練によって大きな変化が生じうることが次第に明らかにされてきているのです。
強固な認知のバイアスや癖も、訓練次第で修正できるそうです。その方法は、マインドフルネス法や認知バイアス修正法、そして投薬による療法や伝統的なカウンセリング療法まで、じつにさまざま……人間の心の可塑性はとても高いのだそうです☆
とても勇気づけられる本でした。
また、これらの研究結果が得られた実験や調査の方法についても、かなり具体的に紹介されているので、神経科学や心理学実験の実状もよく分かり、とても参考になりました。脳や心理学に興味のある方は、ぜひ読んでみてください☆