『「1日30秒」でできる 新しい自分の作り方』2008/4/5
田中ウルヴェ京 (著)
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シンクロ・デュエットの元オリンピックメダリストの田中さんが、心を変えるコーピングの技術を教えてくれる本です。
コーピングとは「対処する(COPE)」にINGのついたもので、コーピングスキルとなると、ストレス対処スキル(認知行動療法の「感情をコントロール」技術)という意味になるそうです。そしてコーピングの技術で感情をコントロールすれば、日常にある「対人関係の苦手意識」「仕事への苦手意識」「あがり症」「不安」「ストレス」「プレッシャー」に強くなるのだとか。
コーピングには「言葉を使ったコーピング」、「道具や心理スキルを使ったコーピング」、「身体を使ったコーピング」の3つの種類があり、この本では、32のテクニックが紹介されています。タイトルに「1日30秒でできる」とあるように、どれもあまり長い時間を必要とはしないので、気軽に始めることが出来ると思います。
ところで私は、この本の1章の次の言葉に驚きました。
「なぜ緊張したり、苦手意識が生まれてしまうのか。これは、究極、一言で言うとこういうことです。「そうなりたいと自分で決めているから」つまり自分で「弱い自分になろう」「緊張しよう」「○○は苦手」というふうに自分でそうなることを選んでいるのです。」
え? 何か大事なことをする前に緊張しちゃうのは、自分がそう望んでいるから? そんな馬鹿な……。と思ってしまいましたが、それを克服するためには、「心の4つのサイクル」を知ることで、「選んでしまっていたことを選ばなくすればいいだけ」なのだそうです。そして、2章「人の心を決める「評価」とは?」で、さまざまな認知のゆがみを知り、3章「負けない心を作る「コーピング」の技術とは?」に進んでいきます。
さらに4章「「1日30秒」でできる負けない心を作るコーピングの技術―新しい自分を作るセルフトークスキル」、5章「「1日30秒」でできる負けない心を作るコーピングの技術―心の調整テクニック」、6章「「1日30秒」でできる負けない心を作るコーピングの技術―身体から心を鍛えるコーピング」で、「クリップ法」、「マイソング」、「一瞬で心を変える「輪ゴム」テクニック」、「深呼吸」、「中心軸直しトレーニング」など実践的な方法を教えてもらえます。
……実を言うと、これらのコーピング技術に関しては、田中さんのより新しい文庫本『「ここ一番」に強くなる自分コントロールの法則』の方が、総合的にまとまっているような気がしますが(汗)、この本でぜひ読んで欲しいのは、「おわりに」で描かれている田中さん自身の心の変遷です。
田中さんは1988年ソウルオリンピックのシンクロ・デュエットで銅メダルを獲得し、その後、長いアメリカ留学で心理学を学び、現在はオリンピック選手やビジネスパーソンなどのメンタルトレーナーとして活躍されているそうです。この経歴をみると順風満帆な人生のように思えてしまいますが、実は21歳でメダリストとなって周囲にチヤホヤされた後、数年で「過去の人」扱いされるようになり、落胆と絶望を味わった過去があるそうです。その時の心境がかなり赤裸々に書いてあり、この本で紹介されているコーピング技術は単なる知識ではなく、ご本人の心を変えるのにも本当に役に立ってきたんだな……と感じることが出来ました。この「おわりに」を読むことで、励まされる気持ちになる人も多いのではないかと思います。田中さんのメッセージが、次の言葉に凝縮されているように感じました。
「焦らないで。一歩ずつ一歩ずつ。
沢山失敗しながら。
がんばんないでがんばりましょう。」
……その他にも、参考になる記述をたくさん見つけることが出来ました。最後に、そのうち、ごく一部を紹介したいと思います。
・認知行動療法における感情のコントロールの考え方は、能動的な感情表現なら、キレることも落ち込むことも人間として当たり前で健全である。
・コーピングの基本は自分を知ること。そして自分の感情の理由を知ることです。
・「僕は自分ができる精いっぱいを淡々と地道にやっていけばいい」
・「未来はまだ始まってもいない。今ある一瞬を大切に過ごすことで、未来のすべては変わる」
・「今できることに集中!」