『決定版 五輪書現代語訳』2012/10/4
宮本 武蔵 (著), 大倉 隆二 (翻訳)
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剣豪・宮本武蔵の兵法の奥義と哲学を伝えた書です。
「武士は兵法の道を確かに会得し、そのほか武芸によく励み、武士の修行すべき道(文武両道)に精通し、心迷うことなく、常に怠ることなく、心・意二つの心を磨き、観・見二つの目を研ぎ、少しも曇りなく、迷いの雲の晴れわたったところこそ、実の「空」と知るべきである(空の巻)。」
最も古く最もオリジナルに近い福岡藩吉田家伝来の書を底本に、原典に忠実な現代語訳がなされています(その他、原文と解説もあります)。
『五輪書』は次の全五巻で構成されています。
・地の巻(兵法の道の概略)
・水の巻(水を手本として心を水のようにする。わが一流の兵法の事)
・火の巻(戦いのこと)
・風の巻(世の中の兵法諸流派のこと)
・空の巻(道理を会得したうえで道理を離れ、兵法の道にひとりでに自由になる)

実を言うと時代劇にも武士にもあまり興味がなく(汗)、自己啓発書というと『人を動かす』とか『七つの習慣』だとか外国由来のもの中心に読んでいたのですが、日本古来のものも知りたくなって、有名なこの「五輪書」を読んでみることにしました、が……やはりこれは自己啓発書ではなく、剣術指南書でした(汗、当然ですが……)。
それでもさすがは一流の剣豪・宮本武蔵らしい見事な構成で、現代にも通じる実践(戦)的なマニュアルになっています。
とくに「水の巻」では、術の基礎となる「兵法心持」「身なり」「目付」「太刀のもちやう」「足遣ひ」の五か条をとても詳しく解説してくれていて、さらに「火の巻」では、実際の戦場での戦い方をすごく実践的に教えてくれているのに感心させられました。第一条では、戦う場の特徴を見極めることや、その場の条件を自分に有利に、相手に不利になるよう工夫の仕方(太陽を背にする、左の空間を広くとる等)など、すごく具体的なのです。
また「風の巻」で他の兵法のことにも言及しているのは、「他をよく知らなくては、自己を知ることはできないものである」からだそうです。
そして最後が「空の巻」。この巻はすごく短いのですが、今までの教えを自分のものになるほど鍛錬した後は、自由に高めていきなさいということで……うーん、見事な構成だ、と思わずにいられませんでした。
ただし、全体としては、やはり自ら剣をふるって戦うための「剣術指南書」で、『孫子の兵法』のような軍師のための兵法書ではないので、経営などへの参考にはあまりならない本だと思います(汗)。
それでも「地の巻」の「わが兵法を学ぼうと思う人は、修行の法がある」という次の九か条は、さまざまな場面で役に立つ心得となるのではないでしょうか。
「第一に、邪でないことを思うこと。
第二に、兵法の鍛錬に励むこと
第三に、もろもろの芸を学ぶこと
第四に、さまざまな職能の道を知ること
第五に、ものごとの利害・得失をわきまえること
第六に、あらゆることについて鑑識力を身につけること
第七に、目に見えないところを洞察すること
第八に、わずかな事にも注意をすること
第九に、役に立たないことをしないこと
おおかたこのような利を心がけて、兵法の道を鍛錬すべきである。」