『キャッシュレス革命2020 電子決済がつくり出す新しい社会』2014/10/9
「キャッシュレス革命 2020」研究会 (編集)
1605020052AP01N
政府の新・成長戦略に組み込まれた「キャッシュレス決済」の普及推進により、2020年の社会やビジネスにはどのような変革が起こるのかについて考察した本です。
2020年は東京オリンピックが開催される年、訪日観光客の激増が期待される年でもあります。そこで政府は外国人観光客を対象にアンケート調査を行ったのですが、「日本は利用できるカードの表示がないので、自分のカードが使えるのかどうかわからない」という不満が上位にランクされる結果となったのだそうです。
実は訪日観光客が利用できるATMネットワークは、ゆうちょ銀行とセブン銀行に限られるのですが(2014年現在)、そういう事情について、この本を読むまで知りませんでした(汗)。
Suicaやクレジットカードを便利に使っているので、日本のキャッシュレス化は進んでいるような気がしていましたが……国際規格とは違う面も多いのだそうです。
たとえば「デビットカード」。日本ではJ-Debitカードが有名ですが、日本国内独自の仕様なので海外では使えません。これに対しVisaデビットカードなどは国際ブランドデビットカードを発行していて、これなら海外でも使えるので、留学する時にも安心して持参できるのだとか。
またSuica、nanacoなどの非接触ICカードで使われているFeliCaチップも世界の主流派とは違うそうで、世界ではEMV準拠のTypeAおよびTypeBが採用されているそうです。
日本のキャッシュレス化はけっこう早かったのではないかと思いますが、それだけに国際的な主流規格が出来る以前にシステムの開発・運用が進んでしまい、それを国際的に流通させられないまま「独自規格」として取り残されてしまったということなのでしょうか? ただ……個人的には、この現状は悪い側面だけではないと思います。「国際的主流派」でないということは、ハッキングなどで海外の犯罪者に悪用されにくいということでもありますから。とは言っても、海外から訪れる旅行客にも使いやすいシステムにしていく必要はあると思いますが……。
この本はキャッシュレス化に関する技術的な解説というよりは、現在(2014年)の日本のキャッシュレス化の状況や近未来について総合的に解説・考察した本なので、一般の人が「キャッシュレス決済」を理解するのに適していると思います。
「第7章 2020年―キャッシュレス社会の姿」では、東京オリンピックの観戦に訪れた外国人旅行者や、留学中の子どもを持つ日本人家族の姿が描かれていて、将来の姿を具体的な形で理解しやすいと思いますが……本当に、こんなにうまくいくと良いですね(笑)。
さて、本の最後の文章は、すべてがキャッシュレスで決済できるようになって、「政府日銀は2030年をめどに5000円紙幣と1万円紙幣の印刷をとりやめる方針を発表し、2050年には世界に先駆けてすべての紙幣・硬貨の発行を取りやめる方向で検討を開始した。」と締めくくられていますが……その場合、なにか恥ずかしいものとか匿名で購入したい場合は、どうするんでしょうか?(笑)匿名で使えるキャッシュレスっていうのは、犯罪に利用されそうで嫌な感じがするのですが……。
いろんなことを考えさせられる本でした。読んでみてください。