『山に登る前に読む本 (ブルーバックス)』2014/8/21
能勢 博 (著)
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登山をする時に、体力はどれくらい必要で、水と食料はどれくらい持って行けばいいのかなど、登山というスポーツを、環境・運動生理学の立場から科学的に解説してくれる本です。
『山に登る前に読む本』というタイトルなので、登山の装備やテントの設置法、地図の読み方など登山の用具や技術的基礎知識を教えてくれる本なのではないかと思ったのですが(汗)、どちらかというと「自分の体力を把握しよう」「体力的な準備をしよう」という内容でした。しかもそれは、2010年8月に実施した登山実験で、中高年の人々が登山した際の酸素消費量・心拍数・高度変化を測定したデータなどに基づいたものなので、すごく説得力があります。
また著者の能勢さん自身も大学では山岳部に所属し、ボゴダ・オーラ峰登山隊にも医師として同行し隊員の基礎心拍数・基礎体温・息こらえ時間の計測を行うなど、さまざまな登山経験を持っている方なので、その経験談も参考になりました。自分自身の失敗談もあかしてくれるなど、すごく実践的にためになる話が多いし、生理学的なこともかなり分かりやすく解説してくれるので、科学的な内容の割に、すごく読みやすかったと思います。
なかでもぜひ実践してみたいと感じたのは、「インターバル速歩トレーニング」。これは、最大酸素消費量の70%以上の速歩と、40%以下のゆっくり歩きを、交互に3分ずつ繰り返すという歩き方で、一日30分以上、週4日以上、5か月間実施すると良いそうです。中高年者の実験では、このトレーニングで、膝の進展筋力は13%、ひざの屈曲筋力は17%、それにともなって最大酸素消費量が10%向上したそうで……5か月間で10歳も若返る体力を得たのだとか!
驚きだったのは、この時の実験では、「一日1万歩を目標に歩いた普通歩行群では、ほとんど体力が向上せず、コントロール群(何もしない)と変わらなかった」ということ。普通歩行とは言っても一日1万歩も歩いたグループなのに、あまり体力が向上しなかったなんて……。どうやら「きつい」と感じる強度のトレーニングを行うことが大切なようです。そして「非常にきつい」運動というのは、(連続的には)4分間が限度なので、「インターバル速歩トレーニング」では、「きつい」と「ゆっくり」を3分間ずつ繰り返すのだそうです。なるほど、ウルトラマンだけでなく人間も約3分が限度なのか……(笑)。
こんな感じに、科学的根拠をあげながらトレーニング法を解説してくれるので、すごく説得力を感じました。この少し「きつめ」の運動によるトレーニングは、暑さ寒さに強くなるのにも役に立つそうです。
これから登山を始めようと思っている方は、ぜひこの本を読んでみてください。事故を減らして安全な登山をするために、すごく参考になると思います。