『必笑小咄のテクニック』2005/12/16
米原 万里 (著)
150423059AP01N
巷にあふれる面白い話の構造を理解することで、臨機応変・自由自在に小咄を創り出そうと考えた米原さんの「必笑のテクニック」本です。
実は、(ロシア語会議通訳として活躍された有名な方だから、きっと上品な小咄だろうな。しかも女性だし)と考えて読み始めたのですが、下ネタも満載で焦りました(笑)。なるほど、彼女に「シモネッタ・ドッジ」という雅号を授けた師匠は、よく分かっていらっしゃる方のようです……。
この本では、世間に流布している小咄について、米原さんの自作も含めて豊富な例をあげながら、ネタの構造で分類し、笑いの本質に迫っていきます。
分類の例としては、「詐欺の手口(相手を錯覚させる方法)」、「同じ内容の順番を変えるだけで悲劇が喜劇になる方法」、「誇張と矮小化による方法」……などなどで、これらを応用して新作を作りましょうと、各章の最後には練習問題までついています(笑)。
詐欺と小咄は手口が似ている(目的は「金品」または「笑い」を巻き上げること)ので、オチを途中で悟られないよう最大限配慮すべきという言葉には、とても説得力を感じました。オチを思いがけないものにするために費やす知力とエネルギーを惜しんではならないそうです(勉強になるなあ☆)。
この本で、必笑テクニックが身につくかどうかは、どの程度、知力とエネルギーを費やせるかにかかっているようなので保証しかねますが、ネタとして使えそうな面白い小咄が満載なので、それだけでも読む価値が十分あると思います。
参考までに、「誇張と矮小化」の章にあった事例を一つ紹介させていただきます。

コーカサス地方のグルジアからアルメニアにかけての山岳地帯を旅したときのこと。山の中腹で現地のガイドが言った。
「そこの崖は気をつけてくださいね。足を踏み外さないように。でも万が一、踏み外した場合は、右側を見るのを忘れないように。見事な絶景をご覧になれるはずですから」
……この小咄を読んで笑いながらも、(ここで足を踏み外したら、死んでも右を見てやる!)と心に誓いました。
また、次のお話はほとんど実話だそうです。

日ロ経済協力についての話し合いの席で、ロシア側の主張。
「今回の〇〇河にかかる鉄橋建設プロジェクトでも対等互恵の原則を貫いていきましょう。日本側にはあの河にかかる鉄橋を提供してほしいのです。ロシア側は河を提供します」
……このロシア側の主張も、本の最後の章に出て来るイタリア語通訳者の田丸公美子さんと米原さんとの「通訳という稼業」をテーマにした対談も、「本当かよ!?」と、その実在性について、思わず日本の本社にe-mailで問い合わせをいれたくなるような内容で、笑っていいものか戸惑いつつ……大笑いしてしまいました。