『データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』2014/7/17
矢野 和男 (著)
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日立製作所中央研究所で2006年に開発された腕時計型のウエアラブルセンサによる人間行動の研究成果から明らかになってきた、人間や社会に普遍的に見られる「法則」や「方程式」について考察した本です。
それは例えば、「人間の活動は、分子の熱運動と同じ法則に従っていた」とか、「職場の生産性は、会話時の身体活動の活発さに左右される」とか、「開発遅延の少ない組織の「ソーシャルグラフ」には特徴がある」とかで、かなり興味深い内容でした。
個人的にすごく参考になったことも多数ありましたが、その一つは「時間の使い方は法則により制限される」というもの。「1日の身体運動の分布は動きの総数というたった1個の変数でおおよそ決まってしまう」のだそうです。
「動きの総数を決めると、U分布によって、どの帯域の行動にどれだけ時間が使えるかが決まる。これを我々は活動予算と呼んでいる。(中略)結局、1日の時間を有効に使うには、さまざまな帯域の活用予算を知って、バランスよくすべての帯域の活動予算を使うことが大切だと気づく。これを無視して、ToDoリストを作ったり、1日の予定を決めたりしても、結局はその通りにはならない。単純素朴に立てた計画は、有害でさえあるかもしれない。なぜなら、この原則を知らないと、予定をこなせなかったのは自分の意志が弱かったためではないかと、自己嫌悪に陥るかもしれないからだ。」という言葉には、すごく納得できました。というのも、忙しくて、毎日、本を読むとかパソコンを使うなどの単一の行動を続けていると、三日ぐらいですごく疲れてしまうようになったからです(汗)。ああ、老化してきたのかなあ……と悲しくなり、可能な限りエクササイズや趣味の時間を確保するように心掛けたり、同じ仕事を連続でやらないように時間を区切ったりと工夫するようにしていましたが……それには、ちゃんとした根拠があったんだなあ、と、なんだか嬉しくなりました(笑)。
その他、「コンピュータvs人間、売上向上で対決!」という記事の、人工知能ソフトウェア搭載コンピュータHと、人間の専門家が、ある店舗の1か月後の売上向上へのアドバイスで競った結果も、とても興味深かったです。結果は……人間の専門家のアドバイスによる対策が何の効果もなかったのに対し、Hの方は売り上げを向上させることが出来たとか(汗)。Hは大量の予備データ(従業員や顧客の動き、レジでの購入記録、業務シフトや店舗レイアウト等)を収集し、それを解析することで、「店内のある特定の場所に従業員がいる時間を増やすと、顧客の購入金額が増える」ことを定量的に示唆したので、その場所に従業員にいてもらうことにした結果、売上が向上したとか。
このように「仮説に頼らず、コンピュータに業績向上策をデータから逆推定させる」ことは、今後、どんどん利用されていくのでしょう。
矢野さんは、「人間と仕事は機械と共進化していく」と予測しています。こうなると、人間の仕事がコンピュータに奪われるていくのでは?とちょっと心配になりますが、それでも人間にしかできないことが、次のように3つ残るそうです。
1)学習するマシンは、問題を設定することは出来ない。人間が問題を明らかにし、学習するマシンを活用して得られた判断を、実行することが求められる。
2)学習するマシンは、目的が定量化可能で、これに関わるデータがすでに大量にある問題にしか適用できない。一方人間は、未知の状況であっても、前に進むことが求められる。
3)学習するマシンは、結果に責任をとらない。責任をとることこそ、人間に固有の能力である。

今後は、「学習するマシン」をうまく活用することで、社会全体がより「幸福」になれるような方向に進めていくべきなのでしょう。私もコンピュータとうまく付き合っていきたいと思います。