『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か (講談社現代新書) 』2015/3/19
小林 雅一 (著)
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自動運転車、ドローン、ロボット兵器、雇用・産業構造、医療・介護、芸術など……「自ら学んで成長する能力」を身につけた次世代ロボット(人工知能)は、人間社会をどのように変えるのかについて考察した本です。
「ルンバ」などの掃除ロボット、自動運転車などの次世代ロボットに使われている技術は、今後、あらゆる製品に使われていくと予想されています。つまり家電などの多くの製品が、一種の知性(AI)をもったロボット的製品へ変わっていく……そして同じようにすべての産業が、その方向へと変わり始めているのです。
今後の日本の産業がどうなっているか考える時には、「人工知能」を排除するわけにはいかなくなっていると思います。この本は、AI(人工知能)について、とても分かりやすく総合的に解説してくれるので、それを検討する上で、とても参考になると思います。
内容は、次の4章から構成されています。
第1章 最新AIの驚異的実力と人類滅亡の危惧
――機械学習の光と陰
第2章 脳科学とコンピュータの融合から何が生まれるのか
――AIの技術と歴史
第3章 日本の全産業がグーグルに支配される日
――2045年「日本衰退」の危機
第4章 人間の存在価値が問われる時代
――将棋電王戦と「インダストリー4.0」

第1章では、AIと人間の関わりについて論じています。例えば自律的マシンへの人間の対応の課題としては、次の4つのものがあるそうです。
1)機械への権限移譲をどう行うか(自動運転車の可能性と危険性)
2)ロボットの行動基準や倫理観をどう決めるか(ぶり返すフレーム問題)
3)利便性とプライバシーのバランス(医療分野への応用におけるリスク)
4)監視社会の到来にどう対処するか(従業員の仕事ぶりをチェックするツール)
これらは、もはや遠い将来の課題ではありません。早急に真剣に考える必要がありそうです。
そして第2章では、AIの基本的な技術とその歴史が分かりやすく要約されています。
さらに第3章では、グーグルやアップル、アマゾンなどの米の主力IT企業が、AIを搭載した次世代ロボットを使って、「ビッグデータ」を収集しようとしている、などについて考察しています。「次世代ロボットは、グーグルをはじめ米IT企業が、あらゆる業界の企業や一般消費者について深く理解し、彼らを内側から支配するために投入する「トロイの木馬」だ」という話には、なんだか背筋が寒くなりました(汗)。
個人的に最も興味深かったのは、第4章の将棋ソフトと作曲ソフトの話です。
将棋ソフトはすでに、人間のプロ棋士にも勝利する実力を身につけてしまっていますが、その構成要素は、大きく「ゲーム木の探索能力」「局面の評価関数」の2つだとか。このうち「ゲーム木の探索能力」は、次に挿せる手の選択肢の中から最善を決めるためにゲーム木を上から下へと探索することで、「局面の評価関数」は盤面を見渡して直感的にどんな状況にあるかを判断することだそうです。「ボナンザ」という将棋ソフトは、この「局面の評価関数」に「機械学習」技術を取り入れ、プロ棋士の6万局以上もの公式戦の棋譜を教材として学習したそうです。
意外だったのは、「将棋ソフトの特徴は、「人間なら、とても指さないであろう」と思われる、おかしな手を指してくること」で、将棋ソフトは膨大なゲーム木の中に潜んでいた、一見おかしな手の中から「正解」を拾えるのだそうです。……これは将棋ソフトが、本当に人間を超えてしまったことを意味しているのかもしれないと感じました(汗)。
さらに驚いたのは、作曲ソフトの「エミー」の事例で、このソフトはバッハ(などの作曲家)の楽譜を、フレーズ、和音、音符に分解するなどして作った音楽データベースを使って、バッハ風などの新しい曲を作曲できるのです(!)。そして、クラシック音楽の聴き比べのイベントで、バッハが作曲した曲、人間がバッハ風に作曲した曲、音楽ソフトのエミーが作曲した曲を聴き比べた結果、なんと聴衆の多くが、エミーの作曲した曲を本物のバッハと判定したとか。
と言っても、実はエミーは短時間で大量の曲を作曲するのですが、エミーの開発者の音楽家のコープ氏が、その中から優れていると感じた曲を選び出しているそうです(笑)。
あー、なーんだ、と一瞬思ってしまいましたが……、それでも、これって凄いことですよね。「芸術性」や「創造性」って何だろうと、改めて考えさせられてしまいました(汗)。
さて、AI(人工知能)は今まで「冬の時代」もありましたが、最近のAIブームは、いよいよ「春の到来!」と単純に喜んではいられないところまで来ているような気がします。というのも最近のAIは、コンピュータの機械的な能力の向上だけでなく、人間の脳研究の新しい知見をも取り込んで、飛躍的に発展してきているからです。AIを日本の産業の中でどう生かしていくか、AIと人間はどう付き合っていくべきかなど、早急に真剣に考える必要がありそうです。