『記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス) 』2001/1/19
池谷 裕二 (著)
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記憶力を高めてくれる「夢の薬」を研究している池谷さんが、記憶に関する脳科学の興味深い研究や、記憶力を強くする具体的な方法を紹介してくれる本です。
タクシー運転手の記憶力を脳科学的に解析したマグワイヤさんの研究によると、行き先まで地図も見ずに運転していくタクシー運転手の脳のある部分は、一般の人よりも大きく、しかもベテラン運転手ほど大きいことが分かったそうです。年をとると記憶力が衰えると言われますが、この研究は、成人した後であっても、鍛えれば記憶力がよくなることを示しています☆
もっとも記憶には年齢に見合った記憶の仕方があるそうで、言語を覚える能力は6歳までが高いとか、絶対音感は3~4歳に体得しないと身に付かないとか、子どもは丸暗記しやすいとか、残念ながら年齢とともに衰える記憶能力もありますが、論理だった記憶力に関しては、大人の方がむしろ高いのだそうです。
この本では、脳の構造にあわせた3つの「記憶の仕方」があることを教えてくれます。それは、(1)何度も失敗を繰り返して覚える、(2)きちんと手順を踏んで覚える(易しいものから難しいものへ)、(3)まずは大きく捉え、最初から細部にこだわらない、だそうです。年齢と共に「丸暗記」する能力は衰えていきますが、この方法を使えば記憶力は、いくつになっても鍛えられるのだそうです(ホッ)。
研究者の方の本なので、生化学や脳科学の基礎知識が分かりやすく解説されていて、記憶だけでなく脳科学についても学ぶことが出来ます。
これらの理論に基づいた勉強法も教えてくれて、例えば、エビングハウスの忘却曲線を考慮に入れると、科学的に能率的な復習スケジュールは、まず学習の一週間後に一回目、次にこの復習から二週間後に二回目、最後に二回目の復習から一か月後に三回目、というように一回の学習と三回の復習を少しずつ間隔を広くしながら、二カ月かけて行うとよいそうです。
また、夢は、脳の情報を整え記憶を強化するために必要な過程なので、新しい知識や技能を身につけるためには、覚えたその日に六時間以上眠ることが欠かせないという研究についても紹介されています。
著者の池谷さんが研究しているのは、記憶力を高める「夢の薬」です。そんなものがあるなら、ぜひ飲みたいと思っている方も多いと思いますが(汗)、現在はまだ「人間の意識」すら、きちんと解明されていないので、慎重に研究を進めて欲しいと思います。健康な人の「記憶力」を高めるよりは、むしろ、現在とても問題になっている認知症の人の治療薬の研究に力を入れて欲しいと思います。
ところで、認知症の一つのアルツハイマー病は、脳内のアセチルコリンが少なくなったために起こると言われているのですが、「かぜ薬」「下痢止め」「乗り物酔い止め」の薬には、アセチルコリンを阻害する成分が入っていることが多いそうです。だから「受験の日」などに「念のために」一応、これらの薬を飲んでおこう、などと考えるのは避けた方がいいようです。
この本は、このように記憶力に関することを具体的に教えてくれます。当面は、薬ではなく、脳科学研究から明らかになってきた「記憶力を強める」方法を使って、「記憶力」を衰えさせないよう頑張りたいな、と思います(汗)。