『直感力』
羽生 善治 (著)
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将棋の世界で生涯獲得タイトル数、歴代1位の偉業達成した羽生さんが、直感を磨く方法や実践の場で用いる技術を教えてくれる本です。
「棋士は、若いときには計算する力、記憶力、反射神経の良さを前面に出して対局するが、年齢を重ねるにつれ少しずつ直感、大局観にシフトしていくのが普通の流れだ。直感や大局観は、一秒にも満たないような短い時間であっても自分の経験則と照らし合わせて使うものなので、ある程度の実地経験を積んでからでないと使えないと思っている。つまり、成功したり失敗したりした経験を消化して栄養となったものが大切な財産なのだ。」
本書の冒頭の言葉です。
そして「直観とは、論理的思考が瞬時に行われるようなものだという。勝負の場面では、時間的な猶予があまりない。論理的思考を構築していたのでは時間がかかりすぎる。そこで思考の過程を事細かく緻密に理論づけることなく、流れの中で「これしかない」という判断をする。そのためには、堆く積まれた思考の束から、最善手を導き出すことが必要となる。直感は、この導き出しを日常的に行うことによって、脳の回路が鍛えられ、修練されていった結果であろう」と言います。
この感覚、すごくよく分かります。将棋の世界でなくても、トラブル対応などの緊迫した局面で、その原因や対処法を「直感的」に推察できることがありますが、それが出来るのは、その仕事を本当に熟知している時に限られるような気がします。つまり「直感力」を鍛えるためには、常にものごとをよく考える習慣をつけることが必要なのでしょう。
また羽生さんは、「直感はなにかを導き出すときだけに働くわけではない。自分の選択、決断を信じてその他を見ないことができる、惑わされないという意志。それはまさしく直感のひとつのかたちだろう」とも言います。
そしてこうも教えてくれます。「直感を磨くには、多様な価値観をもつことだと思う」
さて、若い時から無敵の天才棋士のイメージが強い羽生さんですが、若い時にはやはり不安もあったようです。
「そういった不安を払拭して、完璧に万全の状態にもっていくことなど、なかなかできるものではない。それはいまも同じだ。しかし、完璧とか万全の状態をつくるなど至難の業だということに、当時の私は気づかなかった。それが分かってしまえば、別に必ずしもそういう状態でなくてもいいのだと安心して、本来集中すべきところに帰っていけるのだが、そこに辿り着くまではとにかくもがき続け、考え続けていた。」という羽生さんの言葉は、いままさに不安のまっただ中にある方を、ほっとさせてくれるのではないでしょうか。
また、「ミスや失敗を犯したときの結果については必要以上にこだわることはないと考えている。だれでもミスや失敗はするし、適度にミスをする方が健全であるとも思っている。さまざまなシステムや仕組みをつくるときにおいても、ミスがあることを前提とした柔軟性のあるもののほうが、現実的に使いやすいのではないかと思えてならない」というミスについての考え方も、すごく参考になりました。
この本を読むと、羽生さんがいかに努力して、その強靭で健全な精神力を育ててきたかがよく分かります。
いかに直感力を鍛えるか……将棋に興味がある方だけでなく、すべての人に参考になり、また勇気を与えてくれる本だと思います。ぜひ一度、読んでみてください☆