『危機と決断 前FRB議長ベン・バーナンキ回顧録』
ベン・バーナンキ (著), 小此木 潔(監訳) (監修), 石垣 憲一 (翻訳), & 3 その他
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二〇〇八年秋、米大手投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻を機に世界を襲った金融危機。放置すれば世界大恐慌のような経済崩壊と大量失業に陥ってしまう……その対応の中心にいた前FRB(連邦制度理事会)議長ベン・バーナンキさん本人が、その時の様子を明らかにしてくれる本で、彼の半生記です。
ハーバード大学でデール・ジョンゲルソン教授に計量経済学と統計分析を学んだバーナンキさんは、さらにMITで学び、大恐慌に関する研究を通じて、大恐慌には、現代のセントラルバンカー(中央銀行家)や政策立案者に対する不朽の教訓があると強く感じるようになったそうです。
それは、第一に、不況やデフレ、あるいはその両方が起こったとき、雇用率とインフレ率を正常に維持するために金融政策は強硬に実施されるべきだということ、第二に、政策立案者は金融システムの安定性を維持し信用創造を健全に保つために断固として決断・行動すべきだということ。そしてより一般的な教訓としては、政策立案者は極端な状況においては必要とあらば常識を捨て、枠にとらわれずに考えなければならない、ということだそうです。
バーナンキさんは、2002年のブッシュ政権の時にFRBの理事となり、その後、グリーンスパンさんの後任としてFRB議長に就任しました。
そして、あのリーマン・ショック、大恐慌以来、最悪の金融危機を迎えることになったのです。
あの時、なぜAIGは救済され、リーマンは破綻してしまったのか。その理由をこの本で知ることが出来ます。バーナンキさんとFRBが、どのような経済分析を行い、どのように意思決定をしてきたかが率直に明晰に語られているので、金融政策やマクロ経済の「現実」を知ることが出来て、とても興味深かったです。また、彼が利用してきたインフレターゲティングなどの経済手法についても、分かりやすい解説があるので、経済学の勉強にもなりました。
さらに大統領との会話や、議会での証言、マスコミとの関係についても具体的に語られていて、「公人」って本当に大変なんだなーということをリアルに感じることが出来ました。自分が行っている決定(経済政策)が、株式市場や債券市場に「反応」としてすぐに表れてくること(不用意な「発言」すら、市場の値を左右してしまうことがあるそうです)や、さまざまな中傷にさらされることなど、繊細な神経の人にはなかなか耐えられないような気がします(汗)。
経済だけでなく、政治に興味がある方にも、いろいろな意味で、とても参考になる本だと思います。