『国家の品格』
藤原 正彦 (著)
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いま日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神であり、「国家の品格」を取り戻すことである……数学者の藤原さんが自らの考えを率直に語り、すべての日本人に誇りと自信を与えてくれる日本論です。
なかでも「第2章 「論理」だけでは世界が破綻する」には考えさせられました。
藤原さんは「どんな論理であれ、論理的に正しいからといってそれを徹底していくと、人間社会は必然的に破綻に至ります」と言います。その理由は四つあるそうです。
1)論理の限界(人間の論理や理性には限界がある)
2)最も重要なことは論理では証明できない(不完全性定理)
3)論理には出発点が必要(出発点は常に仮説であり、主に情緒で選ばれる)
4)論理は長くなりえない(長いと信憑性が低くなるが、短いと深みに達しない)
また「第3章 自由、平等、民主主義を疑う」の「人間にはそもそも自由がありません」という言葉にもハッと気づかされることがありました。確かに私たちは生まれ落ちた瞬間から、その国の法律に縛られています。が、それは悪いことばかりではないとも思います。法律は人間同士のトラブルを避けるために制定されているものも多いからです。「無法地帯」という言葉が弱肉強食というネガティブなイメージを持っているのも、そのためだと思います。そして、それでもなお「自由がある」とも言えると思います。法律も努力次第では変えられるのですから。
さらに藤原さんは、「どうしても必要な自由は、権力を批判する自由だけです」と言います。「それさえ確保されれば、他は制限されてもいい」と……。ホッブズの社会契約論では、「人民が自由を放棄して、ある機関に委託する。この機関こそが国家」だそうです。
そして品格ある国家の指標とは、1)独立不羈、2)高い道徳、3)美しい田園、4)天才の輩出の四つだそうです。
それを保つために、日本人一人一人が美しい情緒と形を身につけて欲しい……それが藤原さんの願いのようです。
私も、日本はとても美しくて、賢い人々が多く、安全で暮らしやすい国だと思います。東日本大震災の時の行動でも分かるように、日本人には助け合い精神のある人がとても多いと思います。それはもしかしたら日本が災害の国だからなのかもしれません。地震地帯にある日本にとって、自然は美しいとともに苛烈でもあります。日本人が物やお金以外のものにより高い価値を見出しがちなのも、圧倒的な自然の力の前に、人間の無力さ(諸行無常)を感じてきたからなのかもしれません。度重なる自然災害が、私たちを強く賢く、そして優しくしてきたのかも……。
そんな日本は、世界一素敵な国だと思います。それを保つために私も、「美しい情緒と形」と身につける努力をしていきたいと考えています(……汗)。
さまざまなことを真摯に考えさせてくれたこの本ですが、全体に、数学者らしい率直さとユーモアにも溢れていて、読んでいて楽しかったです。
なかでも冒頭の「もちろん私ひとりだけが正しくて、他のすべての人々が間違っている、かように思っております。もっとも、いちばん身近で見ている女房に言わせると、私の話の半分は誤りと勘違い、残りの半分は誇張と大風呂敷とのことです。私はまったくそうは思いませんが、そういう意見のあることはあらかじめお伝えしておきます。」という文章には、すごく笑わされると同時に感心もさせられました。なるほど! 最初にこんな風に言っておけば、後でどんなことを言っても大丈夫だよなー、と……(笑)。
また「風が吹けば桶屋が儲かる」についても、確率を使って数学的に考えると現実には風が吹いても桶屋は儲からない、などという当たり前のことも言っていて笑わせてくれます。
「武士道精神」はもともと「戦い」のための掟なので、藤原さんの言うように「美しい日本を保つために「武士道精神」を復活させる」のが正しいことだとまでは思いませんでしたが、いろんな意味で、すごく参考になる本でした。ぜひ一度、読んでみてください。