『くるみ割り人形 (ぶたいしかけえほん) 』
ロクサヌ・マリー ギャイエ (著), エレーヌ ドゥルヴェール (イラスト), & 3 その他
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人気のバレエ「くるみ割り人形」の代表的な6場面を、繊細な切り絵で再現した舞台しかけ絵本です。
「舞台型しかけ絵本」というと、今まで知っている絵本は、『ピーターとおおかみ』、『ディズニーの真髄』、『ブラボー!アンジェリーナ』などのように、上下左右にページが開いて、ステージ(舞台)を見ているような感じになる絵本ばかりだったので、そういう形式の絵本を「舞台しかけ絵本」と言うのだと思っていたのですが、この絵本は、上下左右にページが開くわけではありません。写真でも分かるように、ページは90°ぐらいしか開かないようになっていて、奥行きのある舞台を眺めるという作りになっています。
そうか……舞台しかけ絵本っていうのは、「飛び出す絵本」のような「作り」を言うのではなく、「舞台」をしかけ絵本化したもの、つまりテーマが舞台のものを言うのかも、と考え直させられました。あるいは、「作り」と「テーマ」の両方なのかもしれません。しかけ絵本や技法に関しては、「用語」自体に、まだ公式に認められた辞典がないので、おそらく「両方」と考えておいた方が無難なのでしょう(汗)。
それはともかく、この『くるみ割り人形 (ぶたいしかけえほん)』は、とても繊細で美しい絵本です。
しかけのあるページは、4層構造になっていて、一番奥が90°に、一番手真が180°、その間の二層は90°から180°の間の角度に開くように設定されています。そのため、ページを開くと、舞台のように奥行きのある場面を眺めることが出来るのです。
イラストが切り絵になっているので、手前の層の切り絵や、その影が、奥の層に重なってみえるのも素敵です。例えば雪の森を走るクララとくるみ割り人形の王子様の場面では、手前に見える樹の幹が、奥の雪をかぶった樹に重なって、梢の間から夜空の月が垣間見えるのが、すごく幻想的。イラストが繊細で、色彩も大人っぽい色合いなので、できれば飾って楽しみたいほどです(飾るためには、何かでページを押さえる必要がありますが……)。物語には、すべての漢字にひらがなのルビが付けられているので、子ども向けの絵本ではありますが、洗練された形の繊細な切り絵がとても美しいので、大人の女性に贈っても喜ばれると思います。
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・1~8ページ目:くるみ割り人形の物語とイラスト(しかけなし)
・9~10ページ目:クリスマスの飾り付けをするクララと兄さんの舞台しかけ。舞台のカーテンやクリスマスツリーの作る影も美しい。
・11~12ページ目:真夜中に目を覚ますクララ。くるみ割り人形の王子様が、おもちゃの兵隊を引き連れてネズミの軍隊と向かい合っている舞台しかけ。
・13~14ページ目:ふしぎの国の銀世界の森を駆け抜けていくクララとくるみ割り人形の王子様。月の光が輝く白い森の光と影が、とても美しい幻想的な舞台しかけ。
・15~16ページ目:こんぺいとうの精の国にたどりつくクララとくるみ割り人形の王子様の舞台しかけ。
・17~18ページ目:花の世界で踊るこんぺいとうの精たち。繊細な花やバレリーナたちが美しい舞台しかけ。
・19~20ページ目:お菓子の王国の夜空を駆けるトナカイの馬車の舞台しかけ。