『不思議を売る男』
ジェラルディン マコーリアン (著), 佐竹 美保 (イラスト), Geraldine McCaughrean (原著), 金原 瑞人 (翻訳)
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現代のアラビアンナイトともいうべき短編集です。不思議な男が、古道具店の商品にまつわる物語を語る連作短編で、この古道具店を訪れてしまったお客はもちろん、私たち読者も、夢中でお話を聞いてしまいます☆
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
主人公の少女、エイルサは図書館で不思議な男と出会います。行く当てがないというその謎の男は、翌日から、エイルサの母親の古道具店で働くことになりました。
エイルサの母親は、お金のない子どもには、ただ同然で商品を売ってしまうなど、人が好過ぎるため、古道具店は儲からなくて、いつも貧乏をしています。給料が払えないので、男を雇うことは出来ないと言ったのですが、男は、ほんの少しの食べ物とお店の本を読ませてくれればいいと言って店に住み着き、店番を始めてしまいます。
次の日、訪れた客が古い大時計に興味を示すと、この男は、その時計にまつわる不思議な話を始めました……。
このようにして謎の男は、「大時計」「寄木細工の文房具」「中国のお皿」「テーブル」「ハープシコード」「笠立て」「鏡」「ロールトップ・デスク」「木彫りのチェスト」「鉛の兵隊」「ベッド」にまつわる奇妙な話を、訪れた客に語って聞かせ、客をその品物の虜にさせます(逆の効果を与えることもありましたが……)。そして話を聞いたほとんどの客は、喜んで古道具を購入していくのでした。しだいにエイルサ親子も、この謎の男の語る魅力的な話にひきこまれていきます。
男が語るのは、気持ちがいい話ばかりではないのですが、古道具屋のアンティークにふさわしい奇妙なお話ばかりで、古ぼけた品物に、歴史や雰囲気の厚みを与えていきます。
この店で働き始めたばかりの男が、これらの品物の来歴を理解しているはずもないので、これらの話は「まことしやかな」だけだと思われていたのですが、鍵がなくて開かなかった「寄木細工の文房具」からは、男が話した通りのものが出てきました。そして……。
これらの短編は一つ一つに関連はなく、どの順番で読んでも構わないのですが、謎の男とエイルサ親子との関わりが変化していくので、最初から順番通りに読むことをお勧めします。そうすると……最後の章では、「寄木細工の文房具」のさらに外箱が開いたかのような驚きを楽しめると思います。