『ちいさなちいさな王様』
アクセル ハッケ (著), ミヒャエル ゾーヴァ (イラスト), Axel Hacke (原著), & 3 その他
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まったく違う世界から、ふらりと部屋にあらわれた人差し指サイズのちいさな王様と、普通のサラリーマンの僕の物語です。
親指姫なら可愛いのですが(汗)、この物語に登場するのは、人差し指サイズのちょっと太った王様。気まぐれにやってきて、妙なことを言い、僕のグミを食べます(笑)。子供向けの本なのですが、王様が妙に深い含蓄のある寓意的な事を話すので、本当は大人向けなのかも、と思います。ちょっと、『星の王子さま』っぽい感じです。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
王様の世界は、私たち人間の世界とは相当違っています。王様の世界では、子ども時代が人生の終わりにあるらしいのです。
ところで子供の頃、毎日学校でいろんなことを勉強するなんて面倒だなと思ったことはありませんか? 昆虫だったら学校に行かなくても、生きていくのに必要なことは、「本能」で知っているのに……なんて(汗)。
なんとこの王様の世界は、そんな世界のようです。はじめに何でも知っている状態で生まれてくるのです! 生まれてすぐ、微分積分の計算も解けて、コンピューターのプログラミングすら出来るのです。彼らは大きく生まれて、だんだん縮んでいき、小さくなればなるほど、多くのことを忘れていきます。
王様の話に、わあ、うらやましい☆って思ったのは一瞬のことで、すぐに、うーん……それって楽しいかな……と考えてしまいました。
王様は、僕(サラリーマン)の世界では、人間がだんだん大きくなるという僕の話に疑いを持って言います。
「おまえたちは、はじめにすべての可能性を与えられているのに、毎日、それが少しずつ奪われて縮んでいくのだ。それに、幼いうちは、おまえたちは、知っていることが少ないかわりに、想像の世界がやたら大きいだろう。どうしてランプに明かりがつくのか、テレビの画面に映像がうつるのか、理屈がわからないから、想像しなくてはならなかった。」
この後に続いていく王様と僕の問答は、すごく考えさせられます。王様の話はかなり妙に聞こえますが、まったく違う世界(視点)から見ると、物事はまったく違うように見え、より本質に近づけるのかもしれません。
この本を読んで、ふと思い出したのは、何かを作ろうとして、少し高価な紙を切る時には、いつもちょっぴり不安になるということでした。切り損ねないかという恐れだけでなく、切ることで、「紙の持っている無限の可能性を切り捨てている」のではないかと思ってしまうからです。でも「切らなければ、この紙は何にもなれない(=可能性がゼロのままになる)んだから」と考えて、いつも思い切って、切ります(笑)。
いろんなことを考えさせてくれる本です。読み進めるうちに発想の転換を迫られるので、最近、頭がかたくなってきたかな、と思っている大人の方に、特にお勧めします(笑)。