『クリスマス・キャロル』
ディケンズ (著), 村岡 花子 (翻訳)
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幽霊たちとドケチな老人の心温まる物語です(笑)。『デイヴィット・コッパーフィールド』、『大いなる遺産』、『オリヴァー・トゥイスト』などで知られる文豪ディケンズが、人生の真実について語りかけてくれます。挿絵のない小説ですが、とても分かりやすい内容で、しみじみとした温かい気持ちが心に残ります。
ケチで冷酷で人間嫌いのがりがり亡者のスクルージ老人は、クリスマス・イブの夜に訪れた亡霊に、これから「三人の精が来る」と告げられます。それは悲惨な運命をのがれるチャンスだというのですが……。
(ここからネタバレになりますので、内容を知りたくないは続きを読み飛ばしてください)

「まず第一に、マーレイは死んでいた。(中略)マーレイ老人は完全に鋲釘のように死んでいた。」
物語はこんな文章で始まります。こんな出だしで、どんな興味が惹かれますか?(笑) 死人が完全に死んでいるという事実。しかも主人公は、その死人の商売仲間で、ケチで意地悪な老人!
それでも、さすがは文豪、「いいですかな! 鋲釘になにか特別死んだものがある、と自分の見聞からいうつもりはないのですぞ!」などと、独特のユーモアを感じさせる表現に、続きを読まずにいられなくなります。
周囲の人に嫌われるほどケチなスクルージ老人は、クリスマス・イブの夜に部屋を訪れた元相棒のマーレイの亡霊に、「これから三人の精が来る」と告げられます。
そして翌日から、彼の予言どおりに、第一、第二、第三の幽霊が現れ、スクルージ老人を、彼が貧困だった「過去」の旅、貧しい知人の家を訪問する「現在」の旅、そして自分の「未来」への旅へと導きます。
スクルージ老人は、過去、自分がどんな貧しい生き方をしてきたかを思い出し、現在、彼がないがしろにしている周囲の人々は、貧しさや苦しみを抱えながらも、心に暖かさがある人々だということを悟り、そして、このままの生き方を続けていれば、どんな未来が展開していくかを見せつけられて、しだいに心を入れかえていきます。
彼は、今までため込んだお金を周囲の人々のために役立て始めます。一部の人々はその変貌ぶりを笑いましたが、彼は少しも気にしませんでした。そして、マーレイの亡霊が最初に現れたドアのノッカーを見て、「死ぬまで、あれを愛し続けることにしよう!」と叫びます。
そうです。クリスマス・イブの夜、頑迷だった彼にすばらしいプレゼントをくれたマーレイの亡霊に、彼は「感謝と愛」のお返しをしたのです。
この本は子供が読むと、とてもためになりますが、大人にも素晴らしいものを贈ってくれます。自分の嫌な点を直すのに遅すぎることはなく、恥ずかしく思う必要もないのです。
余談ですが、ここで紹介するために『クリスマス・キャロル』を読み直して、現在の私が、幽霊について、気味は悪いけどあまり怖いと思っていないのは、子供の頃これを読んでいたからかもしれないと気づきました。このお話には、そういう副次的効果も期待できるかもしれません(笑)。