『カラフル』
森 絵都 (著)
講談社児童文学新人賞受賞作の『リズム』でデビューした森絵都さんの小説で、産経児童出版文化賞を受賞している超人気作です。森田芳光脚色、中原俊監督、田中聖主演で映画化された他、原恵一監督によるアニメ映画(第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞)にもなっています☆
ストーリーは、死んだはずの「ぼく」が、自殺したばかりの14歳の少年・真の体を借りて蘇ることから始まります。「ぼく」は輪廻のサイクルに戻るために、彼の体を借りて、前世で犯した悪事を思い出さなくてはならないのです。全体に「やる気」のまったくない「ぼく」でしたが、真の家族の家族や友人との交流のなかで、彼の自殺した原因や、周囲の人々の思いを知るうちに、しだいに彼(自分)の周囲には、さまざまな色が満ちていることに気づき始めます。そして彼に体を返してあげたいと心の底から願うようになるのですが、それには「ぼく」が犯した罪を思い出さなければいけないのでした……。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
家族や学校、友達、勉強、恋や異性……人生には、うまくいかないことがたくさんあります。とりわけ思春期の頃には、後から思うとつまらないと思うことにさえ、真剣に悩んだ経験を誰もが持っていると思います。
主人公が体を借りる真はとても平凡な少年で、周囲の人々も不器用で頼りない普通の人ばかり。どの登場人物も身近に感じられ、いつの間にか自分(読者)自身も、真の体を借りて、彼の人生を生き直していくような気になっていきます。
「世界はたくさんの色に満ちている」
「ぼく」はしだいに気づいていきます。悩んでいる自分は、特別じゃない。世界は単純じゃなくて、みんな色んな悩みを抱えて生きている……。
罪と死から始まる重い設定の物語ですが、文章がとても読みやすく、読後感も爽やかです。