『女子高生サヤカが学んだ「1万人に1人」の勉強法』
美達 大和・山村 サヤカ&ヒロキ (著)
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いじめられ、自信をなくした少女が、無期懲役囚との文通を通して励まされ、人生や勉強の仕方を学び、力強く歩み出すという、ちょっと不思議な物語です。
「イジメにあって自信をなくしました」というサヤカさんからの最初の手紙に、無期懲役囚の美達さんは、「無理をしてまで人と付き合う必要はありません」とアドバイスしてくれます。相手の心がわからない人、他人の悪口しか言わない人とは、無理に付き合わずに、何でそんな考え方をするのだろう? と面白がればいいと言うのです。しかも、自分も刑務所で仲間はずれにされたことがあったが、自分の大切な時間を無駄に使うとか、くだらない話をしたくないのでむしろ助かったと思ったくらいだ、とまで言っています(笑)。そして、心の通じる人は、いつか自然に出来るはずだと言ってくれるのです。
サヤカさんの母・友美さんが始めた美達さんとの文通に、こうして娘のサヤカさんが加わることになり、さらに弟のヒロキさんも加わっていきます。
美達さんは、サヤカさんやヒロキさんの手紙に書いてある勉強や人間関係の悩みに、すごく丁寧に具体的に答えてくれます。
自信喪失しやすい姉のサヤカさんには、「成功の秘訣は地味なことです。「続ける」ことを習慣にすることが大切だ」と繰り返し言って、「あなたなら出来る」と励まし続けます。
また自信過剰になりやすい(?)ヒロキさんには、勉強法や体力作りを、すごく具体的に教えてくれます。
このように、二人の個性をよく考えて、丁寧に「人生相談」をしてくれるのですが、その内容は、主に二人の「人間関係」や「勉強や運動で成績が上がらないこと」に関するアドバイスなので、同じような悩みをかかえる中学・高校生の人には、とても参考になると思います。テストを解く時の心構え、記憶力をあげる方法、果てはケンカの仕方まで(!)、どうしてそんなに知っているんですか?と驚くほど詳細に具体的にアドバイスしてくれます。美達さんが二人にアドバイスし続ける真摯な態度に、読みながら、どんどん引き込まれていってしまいます。
それでも、実を言うと、この本をここで紹介するのには、少し葛藤がありました。というのもサヤカさんやヒロキさんを励まし、人生の意味を教えてくれる人が、殺人を犯して服役中の無期懲役囚だったからです。(手紙で、いくら「良いこと」を教えてくれても、「言っていること」と「やってきたこと」のギャップが大きすぎて、信用できないのでは……)という偏見が、正直言って、かなりありました(汗)。
ところが、この本を最後まで読んだ後、紹介したいと思うようになりました。
なぜならこの本は、勉強法だけでなく、人として生きる上で、とても大切なことを色々教えてくれ、深く考えさせてくれた本だったからです。
少女の文通相手の無期懲役囚・美達大和さんは、2件の殺人を犯して服役中ですが、深く反省していて、自ら、一生を刑務所の中で送ることに決め、仮釈放を放棄しています。知的レベルがとても高い上に、すごい努力家なので、もしもこの2件の殺人を実行する前に思いとどまることが出来たなら、どんな凄い仕事ができただろうかと残念に思わずにはいられません。
現在は刑務所の中で、本を読み、本を書くという日々を送っているようですが、彼にとっても、山村さんご一家(仮名ですが)、との交流は、とても励みや刺激になっているのではないかと思います。なかでも、自分のアドバイスで、サヤカさん、ヒロキさん姉弟が、学校でぐんぐん成績を伸ばしていく様子を手紙で知らせてくれることは、刑務所と言う閉塞空間の中で、生きる喜びの一つとなっているのではないでしょうか。山村さんご一家には、今後もぜひ交流を続けていって欲しいと思います。
美達さんは、この本の中で、サヤカさんの「みたっちゃんの事件の本を読みました。人を殺すだけの理由があったのだと思いました」という手紙に、「当時の自分は、事件を起こすだけの理由があると信じていた」としながらも、裁判の後半になって、検察官や弁護士との会話を通じて、「事件の時には、相手の立場になって考えるということをしなかった」ことに気がつき、相手と遺族のことを深く考えるようになり、己への罰として仮釈放で社会に出ないことを決めたと言っています。
自分の罪を深く反省しているこの文章を読んだ時、それまでの自分の中にあった「殺人犯=凶悪犯罪者」の単純な図式に疑問をつきつけられ、「罪を犯した人に、自分はどう向き合うべきか」について深く考えさせられました。
……勉強法だけでなく、さまざまなことを教えられ、考えさせられる本です。そういう意味でも、ぜひ一度、この本を読んでみて欲しいと思います。青少年のみなさんには、特にお勧めしたいと思います。