『日本画 名作から読み解く技法の謎』
東京藝術大学大学院保存修復日本画研究室 (監修), 224 (その他)
日本画の名作に駆使された技法を解き明かすとともに、画材や画法までも解説してくれる日本画の解説書の決定版とも言える本です☆
正直言って、ごく普通の単行本サイズの美術技法の本なのに、3,500円+税は高いなと思ったのですが(汗)、読んでみてビックリ☆ ものすごく内容が濃くて、この値段で、こんなに深い所まで教えてもらえるなんて!と感激しました。
さすがは東京藝術大学大学院保存修復日本画研究室が監修している本だけのことはあって、いままでの名画の修復や研究成果から読み解いてきた日本画の技法の解説の詳しさは比類なく、これを読むと、より深く日本画を鑑賞できそうな気がします。
なかでも、伊藤若冲「鯉鯰図」の墨の技法の、電子記顕微鏡を駆使しての科学的考察には圧倒されました。
その他にも「阿弥陀三尊来迎図」などの復元模写研究による彩色技法の詳細の解明で、なんと17もの工程で描かれていたことが分かったことなども、とても興味深かったです。
昔の絵師の人々が、どれだけ知恵と工夫を凝縮して描いてきたかがよく分かりました。
この本は、「第一章 名作から読み解く素材と技法」、「第二章 よみがえる名画」、「第三章 誰もが知りたい日本画の奥の手」の全三章から構成されていて、第一章、第二章だけでも、日本画についてより深く学べた……と満足できる内容だったのですが、さらに第三章で、日本画の描き方のコツまで教えてもらえます。
「スケッチは直線で描く」とか、「中心から描く(紙からはみ出したら、続きを別の紙に描き、あとで合成して一枚にする)」とか、「構図の決め方では、四枚の白紙をスケッチの周囲に置いて余白を作ってみたり、スケッチをトリミングしたりして、モチーフの大きさや余白のバランスを決める」など、すごく実用的なコツを教えてもらえる上に、「実際に白紙に描く前に、頭の中でじっくり絵を描く」などの心構えも教えてくれます。参考になることが満載でした☆
また画材については、岩絵の具や平筆、墨などの製造工程まで解説していますし、最後には用語集もあるという、すごく充実した内容です
内容は日本画「入門」どころではなく、かなり深いレベルまで踏み込んで教えてくれるのですが、写真を多用して、とても丁寧に解説してくれるので、美術好きの一般人でも理解できると思います。
日本画を学ぶ学生や日本画の愛好家の方はもちろん、美術に興味のあるすべての方に読んで欲しい本で、お勧めです。