『二分間の冒険 (偕成社文庫)』
岡田 淳 (著), 太田 大八 (イラスト)
小学校六年生の少年が、たった二分間の間に、大冒険をする不思議な物語です。
小学校六年生の悟は、とげぬきを保健室に届けるために体育館を抜け出して、不思議な黒猫に出会い、見えないとげを抜いてあげます。すると黒猫は、お礼に願い事を一つ叶えてくれると言って、それから悟は、長い長い二分間の大冒険に巻き込まれていくのです。悟はいつの間にか深い森にいて、黒猫は、「この世界で一番確かなもの」を探して、それを捕まえれば、二分間が過ぎたこの世界に戻って来られると言うのです。
これが、お礼? どうやら黒猫は、悟に、彼が望んだ自分だけの時間をくれたようなのですが……。
悟はわけもわからないまま暗い森を歩きだし、広場の明るい火のそばで、同じ学校の六年生たちに出会います。
ところがなんだか様子が変で、誰も悟のことを知らないのです。それどころか、悟は、同級生の少女 かおりと一緒に竜の館に行って、竜となぞなぞ勝負するか、剣で戦うかして、竜を倒さなければならなくなるのです!
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
この異世界は、子供の夢の世界のような設定です。
なにしろ竜を倒さなければならないんです! しかも一緒に行くのは可愛い女の子で、まるで騎士のよう。アーサー王の物語みたいに岩から剣を抜きます。
彼らが住んでいるのは、子供だけの村。子供一人一人が一軒家に住んでいて、遊んでいると食べ物や衣服がいつの間にかあって、勉強などしなくても九九がすらすら言えるんです(笑)。こんなうまい話があるでしょうか? まあ時々、天から矢が家に突き刺さってきて、それを受けたら、竜を倒しに行かなければならなくなるんですけどね……。
さて、悟がかおりと二人で雨にも負けず進んでいくと、竜の館への道すじにいるのは、老人ばかりでした。大人は一人もいません。実は、竜は、人々の若さとひきかえに、魔法で人々を守っていたのです……。
えーと、竜を倒す必要があるの? と突っ込みをいれたくなりますが、悟たちは生贄なので、倒さなければ老人にされてしまいますし、元の世界に戻れるよう「世界一確かなもの」を見つけるためも、やっぱり倒さなければなりません。
これ以上のネタバレをしてもしょうがないので、あらすじ紹介はこの辺までにします。
この物語は、読み始めると止まりません。続きが気になってしょうがなくなるからです。
知恵と勇気、友情と協力、世界で一番確かなもの……爽やかな読後感とともに、なにか大切なものが心に残ります☆