『失敗のメカニズム―忘れ物から巨大事故まで』
芳賀 繁 (著)
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本人の意図に反して自身や周囲に被害を与えてしまう人間の失敗行動(ヒューマンエラー)についての解説書です。ミスをおかしやすい人や組織、環境とはどのようなものなのかについて、多くの事例をあげて分かりやすく解説してくれるだけでなく、対策を考えるためのヒントも教えてくれます。
まず第一章で、事故とヒューマンエラーの関係に関して、名古屋空港着陸に失敗し大惨事となった中華航空機の墜落事故などの多くの事例をあげます。
続く第二章から四章では、ヒューマンエラーが起こる原因、人間のタイプについて解説し、さらに第五章から七章では、エラーを起こさないためにどうデザインすべきか、人間の性質をふまえたうえでの安全対策をどうすべきかについて、ヒントを与えてくれます。
そして最後の第八章では、ヒューマンエラー要因の対策として、安全の文化をつくっていくことの重要性を示しています。
目次の内容は以下の通りです。
<目次>
第一章 事故とヒューマンエラー(章内の項目は省略)
第二章 見間違い、聞き間違い、勘ちがい
第三章 ドジ型とボケ型
第四章 注意と記憶の失敗
第五章 エラーを誘う設計と防止するデザイン
第六章 違反と不安全行動
第七章 人は考えずに行動する
第八章 安全の文化

普通の人間には、「うっかりミス」を完全になくすことは不可能だと思います(汗)。
また「人は考えずに行動する」というのは悪いことばかりではなく、むしろ良いことの方が多いような気がします。例えばテニスでボールを返すことなどは、訓練して無意識行動化することで、スピードアップが図れるのだと思いますし、歯磨きなどの日常行動でも、歯磨きしながら、いかに歯を磨くかではなく、今日一日のスケジュールのことを考えることが出来るのは、訓練によって「考えずに行動できる」結果だと思います。
これらの「人間の特性」をふまえた上で、ヒューマンエラーを誘発しないデザインをどのように設計するか、どのように安全な社会システムを作っていくかを考えていくのが重要なのではないでしょうか。この本は、ヒューマンエラーに関して網羅的に教えてくれるので、とても参考になります。