『窓ぎわのトットちゃん』
黒柳 徹子 (著), いわさき ちひろ (イラスト)
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この本は、長寿番組『徹子の部屋』の司会者としても活躍している黒柳徹子さんの子供時代を描いた自伝的作品です。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
冒頭の「はじめての駅」で、自由が丘駅の駅員さんが有無をいわさず切符を取り上げて集めているのを見て、「私、大人になったら、切符を売る人になろうと思うわ」と言うトットちゃん(黒柳徹子さんの子供時代の愛称)に、まずニヤリとさせられました。
そして、小学校一年生の時のエピソードをこんなにリアルに記憶しているなんて凄い、さすが才女だと思ったのですが、彼女が自由が丘のトモエ学園に転校した理由を知って、さらにびっくり。なんと小学校を「退学!」になったからだったのです。
え、え、え? 小学校って退学出来るの? と思わなくもなかったのです(汗)が、「落ち着きのなさ」「自由な行動」「おしゃべりのうるささ」で授業のさまたげになるから、他の学校に行って欲しいという理由だったそうです……。なお、この理由をお母さんは、トットちゃんに二十歳を過ぎるまで教えていなかったとのことで、お母さんの思いやりの深さにも感心させられました。
トモエ学園は電車の車両を教室として使っていて、たちまちそれに魅せられたトットちゃんは、喜んでこの学校の生徒となるのですが、この日の校長先生(小林先生)とのエピソードが、この本の中で一番心に残りました。
お母さんを返した校長先生は、「さあ、なんでも、先生に話してごらん。話したいこと、全部」と言ってくれて、トットちゃんは素直にそれに応じて一生懸命話をし……なんと、校長先生は、たっぷり四時間も彼女の話を真剣に聞いてくれたのだそうです。
うわー!と思いました。
そして、これがトモエ学園の教育の真髄なのだと思いました。
子供の個性をつぶさない、というより一見欠点に見えるような個性でも、それを矯正するのではなく、むしろ活かす方向にじっくり時間をかけて伸ばしていく。
身体的な問題があるので運動に一番向かないはずの高橋君が、運動会でいつも一等になるエピソードでも、普通の学校なら「他の面で一番になればいい」と指導するのではないかと思うのに、運動会で一等をとれるよう競技を工夫するという点に、先生の熱い思いが感じられました。
この本は、子供だけでなく、すべての人に、何か(暖かい善いもの)を感じさせてくれると思います。
しかも、あの黒柳徹子さんでも子供の頃は問題行動を起こしていた、ということは子供自身に勇気を与えてくれるだけでなく、ご両親への励ましにもなると思います。
さらに、子供たちが自由にのびのびと学ぶトモエ学園の姿は、教育者の方たちにも新しい視点を与えてくれるのではないでしょうか。
「君は、ほんとうは、いい子なんだよ。」
トットちゃんの心の中に大きな自信を与えてくれた小林先生のこの言葉、本当に素敵ですね……。