『新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫) 』
宮沢 賢治 (著)
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孤独な少年が、友人とともに銀河を旅する幻想的な物語で、宮沢賢治さんの代表作の一つです。
「ではみなさんは、そういうふうに川だといわれたり、乳の流れたあとだといわれたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか」
先生に尋ねられて、少年ジョバンニは(星だ)と思いながらも、どぎまぎして答えられません。続けて聞かれた友人のカンパネルラも、知っているはずなのに、なぜか答えませんでした。ジョバンニはそれを、自分への同情のせいだと感じてしまいます。ジョバンニは、漁から戻らない父や病気の母のために朝夕仕事をしていて、勉強にも遊びにも身が入らず、意地悪な級友にからかわれ、疎外感を感じていたのでした。
星祭りの夜、孤独をかみしめながら登った天気輪の丘で、ジョバンニはいつの間にか銀河鉄道に乗り込んでいました。そして親友カムパネルラとの銀河めぐりの旅が始まります……。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
二人は旅の中で出会う様々な人との交流を通じて、次々と生きる意味を発見して行きます。
そして旅の終わりに、さそりの話に胸を打たれたジョバンニは、カムパネルラに、「僕もうあんな大きな暗の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいを探しに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」と言って誓い合うのですが、カムパネルラの姿は、いつしか消えていました。
実はこの時、現実の世界では、カムパネルラは自分の命を犠牲にして、川に落ちた友達を救っていたのです。
ジョバンニは、銀河鉄道の旅がほんとうは何を意味していたのかに気づき、どのように生きるべきかを悟りました……。
物語の最後に、彼が牛乳(そのなかに脂油が星のように浮かんでいるので、銀河=ミルキーウェイを呼ばれている)を手に、母親のもとに戻っていくのは、この美しくて悲しい銀河鉄道の記憶とともに、せいいっぱい生きていくことの暗喩なのでしょうか。
この『新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫) 』には、他にも「よだかの星」「オツベルと象」「セロ弾きのゴーシュ」「北守将軍と三人兄弟の医者」「饑餓陣営」「ビジテリアン大祭」などの14編が収録されています。